発電所への石炭搬送
年間の褐炭産出量が3000万トン、表土(炭層を覆っている土)が400万立法メートルに上るAGL社のロイヤン鉱山は南半球最大の炭鉱です。採掘プロセス、そして坑底から発電所までの搬送がほぼ完全に自動化されており、高度な採鉱技術やマテリアルハンドリング技術がさまざまと導入されています。
高さ50メートル、長さ190メートルもの巨大な電動式バケット・ホイール・ドレッジャが露天掘り炭鉱の「ベンチ」を巡回し、1時間に平均4,000トンもの石炭が採掘されています。石炭はバケットホイールから、まずドレッジャのコンベアに移され、続いて搬送コンベアシステムへと流れていきます。
搬送コンベアシステムは、ベルト幅2メートル、秒速5.2メートル(時速19km)で動く複数のコンベアで構成されています。全部合わせると25km以上もの長さとなるこのコンベアシステムは、掘出したばかりの石炭を坑底から地表へと運び出します。石炭は搬送コンベアシステムで原炭バンカへと運ばれます(バンカの収容力は80,000トン)。
その後、石炭はバンカから直接(コンベアで)、鉱山「入口」にある2つの発電所へと運ばれます。1つはAGL社のロイヤン発電所(2,210MW)、もう1つはGDFスエズ社のロイヤンB発電所(1,000MW)です。
コンベアの運転を止めない
発電所を常時稼動させ費用効率に優れた電力を生産するには、一定量の石炭を絶えず石炭バンカに送込む必要があります。バンカが収容できる石炭量は20時間分であるため、コンベアシステムの性能が極めて重要です。
ロイヤン鉱山で使用している旧式の搬送コンベアのドライブシステムは水冷・渦電流式カップリング(ECC)技術を土台としています。何年も前に導入した当初は、さまざまな速度で高トルクを実現する理想のドライブソリューションでした。莫大な量の石炭を坑底から地表へと運び上げるのに最適だったのです。
しかしながら、旧式のドライブシステムによる石炭搬送は今の時代に適っていません。もっと効率的に搬送できる手段があることにAGL社ロイヤン鉱山のエンジニアチームは気付きました。そのうえ、渦電流式カップリングを使用した既存のドライブシステムは保守が難しくなっており、制御システムの信頼性も低下していました。
AGL社ロイヤン鉱山の電気監督者であるロバート・コリンズ氏は次のように述べています。「ECCは古いコンベア制御法です。当社では、採掘事業の拡大に伴い、もっと大きな駆動力を必要としていました。新しいシステムに切換える必要があったのはそのためです。
高まる電力需要に対応しなければならなかったことが、AGL社ロイヤンにとって、最新技術の搭載されたドライブソリューション、鉱山の過酷な環境の中で効率よく稼動するドライブを導入する契機となりました。」
現場にはコンベアがたくさんあります。そのため、AGL社ロイヤンでは新しいドライブ技術の導入を段階的に行ない、既存のドライブシステムと制御アーキテクチャに徐々に統合させています。